背泳ぎは呼吸がしやすい泳法と思われがちですが、実際には水の上でどう浮くか、左右にぶれずにどう進むか、どこで力を入れてどこで抜くかという感覚がそろわないと、思うように前へ進みにくい種目です。
とくに初心者は、顔が出ている安心感がある一方で、脚が沈む、進行方向がわからない、腕だけを回して疲れる、ターンになると急に慌てるといったつまずきを同時に抱えやすく、背泳ぎを苦手意識の強い泳法にしてしまいやすいです。
一方で、背泳ぎはコツを順番に押さえると変化が出やすく、姿勢、キック、腕のかき、ローリング、目印の使い方、練習メニューの組み方までがつながると、泳ぎが急に軽くなったように感じられることも珍しくありません。
ここでは、背泳ぎの基本理解からフォーム改善、よくある失敗の修正法、レベル別の練習法、競技ルールと安全面までを一本の流れで整理し、はじめて背泳ぎを本格的に学ぶ人にも、タイムを伸ばしたい人にも役立つ形で詳しく解説します。
背泳ぎについて先に押さえたい基本
背泳ぎを上達させるうえで最初に理解したいのは、背泳ぎは腕力だけで進む泳法ではなく、水面近くで長くまっすぐ滑れる姿勢を土台にして、腕と脚と体幹の回旋を組み合わせて進む泳法だという点です。
呼吸が自由で顔が沈みにくいという長所はあるものの、その分だけ姿勢の乱れをごまかしやすく、自己流のまま泳ぐと、頑張っているのに進まない感覚に陥りやすいので、最初の理解がとても重要になります。
このセクションでは、背泳ぎのフォームを作るために欠かせない基本を、順序立てて整理しながら、初心者がつまずきやすい点と中級者が見直したい点をまとめて確認していきます。
背泳ぎは姿勢づくりが最優先
背泳ぎで最初に整えるべきなのは腕の回し方よりも水面での姿勢であり、耳、肩、胸、腰、太ももができるだけ水面近くに並ぶ時間を増やせるほど、同じ力でも前へ進みやすくなります。
理由は単純で、背泳ぎでは脚が少し沈むだけでも体全体が斜めになって水の抵抗が増え、腕でかいた力が前進ではなく体を支えるために使われやすくなるからです。
よくある失敗は、顔を上げて視線を足元へ向ける、あごを強く引きすぎる、腰を反らせて胸だけ浮かせるといった動きで、どれも脚が沈みやすくなり、泳ぎの軽さを失わせます。
練習では、まず壁を蹴って仰向けに浮く時間を作り、キックを急がずに耳が半分水に入り、みぞおちから脚までが水面近くに保てる姿勢を覚えると、背泳ぎの感覚が一気に安定しやすくなります。
背泳ぎが苦手な人ほど、泳ぎながら修正しようとする前に、浮く姿勢そのものを作る時間を取ったほうが変化が早く、フォーム改善の土台も崩れにくくなります。
進む力は腕だけでなく回旋で作る
背泳ぎでは腕のかきが大きな推進力を生みますが、本当に速く楽に進むためには、肩と腰が連動して体が左右に回旋する流れを使い、腕が強い位置で水を押せるようにすることが欠かせません。
体がまったく回らないまま腕だけを回すと、手のひらで水をつかむ前に肩が詰まりやすく、表面をなでるような浅いかきになりやすいため、疲労の割に前へ進まない泳ぎになります。
一方で、適度なローリングが入ると、入水した腕が自然に水をとらえやすくなり、反対側の腕も水上で回しやすくなるので、背泳ぎ特有の滑らかなテンポが作りやすくなります。
実際の感覚としては、肩だけをひねるのではなく、脇腹から腰までが同じ方向へゆるやかに回る意識を持ち、入水と同時に反対側へ切り替わる流れを感じると、かきが深く安定しやすいです。
ただし回旋を大きくしようとして腹ばいに近づくほど返してしまうと姿勢が崩れるので、あくまで水を押しやすくするための回旋として使い、力任せにひねりすぎないことが大切です。
キックは小さく速く打つ
背泳ぎのキックは大きく派手に打つほど進むわけではなく、股関節から細かく連続して動かし、ひざは軽くゆるめつつも水面の下に収めるくらいの小さな幅で刻むほうが、姿勢もテンポも安定します。
ひざから下だけを強く振ると、自転車をこぐような動きになって水を前に押してしまい、進みにくくなるだけでなく、下半身が沈んで上半身の動きまで乱しやすくなります。
足首が固い人は水を押し返す面が作りにくいため、背泳ぎのキックが空振りしやすいですが、つま先を無理に伸ばしきるより、足首をやわらかく保って水をはたく感覚を覚えたほうが改善しやすいです。
コツは、足先がときどき水面を軽くかすめるくらいの位置でリズムを刻き、太ももの付け根から脚全体がしなるように動かすことで、上半身を支えながらストロークのリズムも整えられるようになります。
短距離では細かく強めのキックが合いやすく、長めの距離ではやや省エネの打ち方が合いやすいものの、どちらでも共通するのは、姿勢を崩さない幅で打ち続けることが最優先だという点です。
顔と視線は固定して水面を乱さない
背泳ぎでは呼吸が自由なぶん、顔が動きやすくなりますが、頭の位置がぶれると体の軸まで揺れてしまうため、顔と視線は思っている以上に固定する意識を持ったほうが泳ぎが安定します。
頭を持ち上げると首まわりに力が入り、てこの関係で腰と脚が沈みやすくなり、逆にあごを引きすぎると胸が詰まって肩の回りが悪くなり、腕の入りと水のとらえが浅くなりやすいです。
感覚としては、後頭部を水にあずけ、耳が半分ほど水に触れた状態で天井や真上の一点を見るつもりで保つと、首がほどよく脱力し、体幹の軸もぶれにくくなります。
まっすぐ進みたいときに進行方向を確認したくなって頭を横に向ける人もいますが、頭を振るほど蛇行しやすくなるので、方向確認は頭ではなく天井の目印やレーン感覚で行うのが基本です。
背泳ぎで安定感が出ない人は、手足の技術以前に頭の位置が落ち着いていないことが多いため、まず頭を静かに保てているかを動画で見直すだけでも改善点が見つかりやすくなります。
息継ぎしやすくても力みは禁物
背泳ぎは顔が上を向いているので呼吸がしやすい泳法ですが、実際には呼吸のしやすさがかえってリズムの乱れにつながることもあり、息を止める癖や吸いすぎる癖があると全身が固まりやすくなります。
よくあるのは、腕を回すことに意識が向きすぎて呼吸が浅くなり、胸だけが力んで肩が上がり、その結果としてローリングが小さくなり、かきも浅くなるという悪循環です。
背泳ぎでは無理に大きな吸気を入れるより、左右の腕のテンポに合わせて小さく吸って小さく吐くリズムを作ったほうが、首や胸が固まりにくく、泳ぎの流れも保ちやすくなります。
たとえば片腕が入水するタイミングで自然に吸い、反対側の動きでゆるく吐くような自分なりの呼吸パターンを決めると、緊張した場面でもフォームが崩れにくくなります。
呼吸が楽という長所を本当の武器にするには、呼吸そのものを意識しすぎず、体幹の伸びと首の脱力を保ったままリズムよく続けることが大切です。
まっすぐ進むには目印を使う
背泳ぎで多くの人が悩むのが蛇行であり、これを防ぐためには、腕や脚を対称に動かすことに加えて、プールの上にある目印を使って自分の進行方向を管理することが欠かせません。
屋内プールなら天井のラインや照明の列、屋外プールなら空の位置関係やレーンロープとの距離感を使い、自分がどちらへずれやすいかを早い段階で把握しておくと修正がしやすくなります。
また、背泳ぎでは壁の手前に設置されたバックストロークフラッグが重要で、そこから何回ストロークを打つと壁に届くかを覚えておくと、ターンやゴールで慌てにくくなります。
曲がる原因は方向感覚だけではなく、片手だけ深くかいている、片足だけ強く打っている、呼吸や緊張で頭がずれているといった左右差にもあるため、目印と動作の両面から確認する必要があります。
まっすぐ進めるようになると、余計な修正動作が減って泳ぎのテンポがそろい、同じ技術でも体感スピードが上がるので、方向感覚の練習は地味でも非常に効果が高いです。
背泳ぎのターンはルールと技術を分けて考える
背泳ぎのターンは難しく見えますが、理解を分けると整理しやすく、競技ルールとして何が許されるかを知ることと、実際に速く安全に回る技術を身につけることは、別々に考えたほうが混乱しません。
競技では、折り返し動作中に肩が胸の位置に対して垂直以上に裏返ってもよく、その後は速やかな一連の動作として片腕または同時の両腕のかきを使ってターンに入り、壁を離れるときには再びあおむけに戻っている必要があります。
ただし初心者がいきなり競技的なロールオーバーターンを急ぐと、壁との距離感が合わず、回ることだけが目的になって姿勢もテンポも崩れやすいので、まずはフラッグからの歩数ならぬストローク数を安定させることが先です。
安全面も含めるなら、はじめは壁に近づく感覚、最後の一かきから壁までの距離、回転後に仰向けで押し出す感覚を分けて覚え、その後に連続動作へつなぐと、無駄な減速を減らしやすくなります。
ターンで失敗する人ほど、回り方そのものよりも、フラッグから壁までの距離管理と、焦って余計な動きを増やさないことを優先したほうが、結果的に速く安定したターンにつながります。
背泳ぎが苦手な人ほど分解練習が効く
背泳ぎは全体を通して泳ぐと何が悪いのか分かりにくいため、苦手意識がある人ほど、一気に完成形を目指すより、浮く、打つ、かく、回る、まっすぐ進むという要素を分けて練習したほうが上達が早くなります。
たとえば、仰向け浮きだけを安定させる練習、片手背泳ぎで左右差を確認する練習、横向きキックで回旋の感覚をつかむ練習、フラッグから壁までの回数を数える練習は、それぞれ目的が明確で効果も見えやすいです。
全体泳では勢いでごまかせる部分も、分解すると癖がはっきり表れるので、自分が脚で支えすぎているのか、腕の入りが浅いのか、頭が動いているのかを発見しやすくなります。
また、分解練習は体力の消耗を抑えながら技術練習の量を確保できるため、初心者だけでなく、フォームを見直したい中級者や、レーステンポを整えたい競技者にも有効です。
練習のたびに一つだけテーマを決めて分解メニューを入れる習慣ができると、背泳ぎは感覚まかせの種目ではなく、改善点を積み上げやすい種目へと変わっていきます。
背泳ぎが上達するフォームの作り方
背泳ぎのフォームは、見た目のきれいさだけを追っても安定しません。
本当に重要なのは、水面での位置関係、腕が水をとらえる順番、体の回旋が起きるタイミングをそろえ、抵抗を減らしながら推進力を逃がさない形を作ることです。
ここでは、姿勢、腕、回旋というフォームの中心部分を、実際の練習で意識しやすい形に落とし込んで整理します。
浮く姿勢を作るコツ
背泳ぎのフォームを立て直すときは、まず肺の浮力を使って上半身を安定させ、頭と肩の位置で脚の高さを調整する感覚を身につけると、泳ぎ全体が崩れにくくなります。
体を一直線にしようとして全身を固めると、かえって胸郭や股関節が動かず、必要な回旋まで失われるので、浮く姿勢は硬い一直線ではなく、脱力したまま長く伸びる感覚で作るのがコツです。
- 耳を半分ほど水に入れる
- みぞおちを軽く浮かせる
- 腰を反らせすぎない
- ひざを水面下に収める
- 足首はやわらかく保つ
この基本がそろうと、キックが姿勢維持のための苦しい動きではなく、ストロークを支える軽いリズムになり、腕のかきも深く入りやすくなります。
逆に、浮こうとして胸だけを突き上げる姿勢は一見よさそうでも腰痛や脚沈みにつながりやすいので、頭から足先までを静かに水に預ける感覚を優先してください。
腕のかきで水を逃がさない手順
背泳ぎの腕は大きく回せばよいわけではなく、入水からキャッチ、プル、抜き上げまでの順番がそろってはじめて推進力につながるので、各局面の役割を分けて理解したほうがフォームが安定します。
とくに入水直後に急いで水を押そうとすると、手のひらだけで表面をかいてしまいやすいため、まず前腕も含めて水を受ける面を作る意識を持つことが大切です。
| 局面 | 意識 | 避けたい癖 |
|---|---|---|
| 入水 | 肩幅付近へ自然に入れる | 頭の真上に交差する |
| キャッチ | 前腕でも水を受ける | 手先だけで払う |
| プル | 体側へ向けてまっすぐ押す | 外へ逃がす |
| フィニッシュ | 押し切ってから抜く | 早く手を抜く |
背泳ぎでは腕のテンポが速くなりやすいですが、速さより先に水をつかむ順序を整えると、一かきごとの進みが増え、結果として無理に回さなくてもスピードが上がりやすくなります。
片手背泳ぎやスカーリングを使って前腕に水圧を感じる練習を入れると、表面をなでる癖が減りやすく、背泳ぎの推進感をつかみやすくなります。
ローリングの入れ方
背泳ぎのローリングは大きく見せるための動きではなく、腕が強い位置で水を押し、反対の腕を楽に戻すための補助動作なので、目的を理解して入れることが重要です。
ポイントは、入水と同時にすぐ回り切ってしまうのではなく、かいている側に少し乗り続けてから次の入水で切り替えることで、腕が水を押す時間を確保しやすくすることです。
この感覚をつかむには、片腕を体側に置いたままの片手背泳ぎや、横向きのキックから一かきずつ切り替えるドリルが有効で、肩と腰が一緒に回る感覚を覚えやすくなります。
反対に、肩だけを強引に回したり、腹ばいに近づくほど返してしまったりすると、背泳ぎの軸が乱れて蛇行や失速の原因になるので、回る量より回る質を優先してください。
うまくローリングが使えるようになると、背泳ぎは腕をぶん回す泳ぎではなく、体全体の流れで進む泳ぎに変わり、疲れ方まで大きく変わってきます。
背泳ぎで遅くなる原因を直す
背泳ぎでタイムが伸びないときは、練習量そのものよりも、遅くしている原因を見つけて取り除くほうが効果的です。
背泳ぎは抵抗の影響が大きいため、小さな崩れでも速度低下が起きやすく、しかも泳いでいる本人には原因が分かりにくいという特徴があります。
ここでは、背泳ぎでよく起きる三つの失速要因を整理し、どこを直すと泳ぎが軽くなるのかを具体的に見ていきます。
脚が沈む原因を見極める
背泳ぎで脚が沈む原因はキック不足だけとは限らず、頭の位置、胸の張りすぎ、腹圧の弱さ、息を止める癖などが重なって、下半身全体が沈みやすくなっていることがよくあります。
とくに多いのは、進むことを急いで顔を少し持ち上げる癖で、本人はわずかな動きのつもりでも、頭が上がると反対側の脚は想像以上に下がり、キックの負担が一気に増えます。
修正するときは、キックを強くする前に、後頭部を水に預けたまま軽くへそを浮かせる感覚を作り、脚が沈まない位置を先に見つけるほうが、少ない力で安定しやすくなります。
そのうえで、太もも主導の小さなキックを刻めば、脚は水面近くに戻りやすくなり、腕で無理に体を支える必要も減るので、ストロークの質まで上がりやすくなります。
蛇行する原因を整理する
背泳ぎの蛇行は方向感覚の問題に見えますが、実際には左右差の積み重ねで起きることが多く、片手だけ深く入る、片脚だけ強く打つ、頭が片側へ寄るといった小さな偏りが進路を曲げています。
そのため、ただ真っすぐ泳こうと意識するだけでは改善しにくく、自分がどの左右差を持っているかを確認して修正する必要があります。
- 入水位置が左右で違う
- 片腕だけ早く抜ける
- 片脚だけ強く打っている
- 頭が片側へ傾いている
- 呼吸のたびに首が動く
練習では、25mを軽く泳ぎながらどちらへずれたかを毎回確認し、片手背泳ぎや板なしキックで左右差をあぶり出すと、原因の切り分けがしやすくなります。
蛇行は一つの原因だけで起きるとは限らないので、まっすぐ進む感覚が安定するまでは、方向確認と左右差の修正を同時に行うことが大切です。
テンポが乱れる原因を修正する
背泳ぎはテンポが崩れると一気に泳ぎが重くなり、腕だけが先走るか、逆に一かきごとに止まるような泳ぎになってしまうので、リズムの乱れは早めに直したいポイントです。
テンポが乱れる背景には、ローリング不足、フィニッシュの早さ、キックとストロークの不一致、壁への不安による失速などがあり、単純に腕を速く回しても解決しにくいことが多いです。
| 乱れ方 | 起きやすい原因 | 修正の方向 |
|---|---|---|
| 腕だけ速い | 水をつかめていない | キャッチを丁寧にする |
| 一かきごとに止まる | フィニッシュ不足 | 最後まで押し切る |
| 後半で失速する | キックが大きすぎる | 幅を小さく保つ |
| 壁前で慌てる | 回数管理が曖昧 | フラッグから数える |
テンポを整えたいときは、25mごとに同じストローク数を目指す練習や、一定リズムでの片手背泳ぎを入れると、自分の崩れ方が見えやすくなります。
背泳ぎのテンポは気合いではなく、姿勢、回旋、キャッチ、キックがそろった結果として整うものなので、土台を崩したまま回転数だけ上げないことが重要です。
背泳ぎの練習メニューをレベル別に組む
背泳ぎの練習は、ひたすら本数を泳ぐよりも、自分の課題に合わせて目的を分けたほうが効果が出やすくなります。
とくに背泳ぎは、浮く感覚、まっすぐ進む感覚、ターンやスタートの感覚が混ざりやすいため、レベルに応じて練習の比重を変えることが大切です。
ここでは、初心者、中級者、競技志向という三つの視点から、背泳ぎを伸ばす練習の組み方を紹介します。
初心者向けに25mまでを安定させる
初心者が最初に目指すべきなのは、速く泳ぐことよりも、25mを姿勢を崩さずに泳ぎ切ることであり、そのためには浮きとキックと方向感覚を中心にした短い反復が向いています。
長く泳ごうとすると途中で焦って腕を回しすぎるので、はじめのうちは10mや15mの短い距離を繰り返し、毎回同じ姿勢でスタートできることを優先したほうが上達が早いです。
- 4×10m仰向けキック
- 4×10m片手背泳ぎ
- 4×15m背泳ぎゆっくり
- 4×25mフラッグから回数確認
- 各本の後に姿勢を自己確認
この段階では本数より質が大切なので、疲れてフォームが崩れたら無理に続けず、頭の位置と脚の高さを整え直してから次の本に入るのが効果的です。
25mが安定してきたら、速さを上げる前に、同じ姿勢で同じ回数に近づける練習へ進むと、無駄な動きの少ない背泳ぎが身につきやすくなります。
中級者向けに効率を高める
25mや50mは泳げるものの、進みが軽くならない中級者は、筋力や持久力を増やす前に、一かきの質と回旋のタイミングを高めるメニューを入れると効果が出やすいです。
中級者の課題は、泳げてしまうがゆえに癖が固まりやすい点にあるため、通常泳だけでなくドリルと本泳を組み合わせ、感覚を移し替える構成が重要になります。
| メニュー | 目的 | 意識 |
|---|---|---|
| 6×25m片手背泳ぎ | 左右差の修正 | 入水位置をそろえる |
| 4×50mドリル+スイム | 感覚の移行 | 回旋を保つ |
| 4×75m背泳ぎ | 効率維持 | 同ストローク数を狙う |
| 4×25mフラッグ確認 | 壁前の安定 | 回数を一定にする |
この層では、一本ごとに速さだけを見るのではなく、ストローク数、ずれた方向、壁前の余裕を記録すると、自分の伸びしろが数値と感覚の両方で見えやすくなります。
効率が上がると疲労感の質が変わり、同じ練習量でも後半まで姿勢が落ちにくくなるので、中級者ほど技術練習の比率を軽視しないことが大切です。
競技志向ならスタートとターンを磨く
競技で背泳ぎのタイムを縮めたいなら、泳ぎの途中だけでなく、スタート、浮き上がり、ターン、壁からの離れまでを一つの技術として磨く必要があります。
背泳ぎのスタートは水中から始まるぶん、空中へどれだけきれいに体を出せるかと、入水後にどれだけ抵抗を増やさずに進めるかが勝負になり、平泳ぎやクロールとは感覚がかなり異なります。
練習では、スタートの構えからの反応だけを繰り返す日と、フラッグからターンまでの距離感だけを詰める日を分けると、課題が散らばらず改善が早くなります。
また、スタート練習は深さの十分な場所で、必ず指導者や監督者の管理のもとで行うべきであり、恐怖感が残る状態で無理に反復すると、フォームではなく回避動作が身についてしまいます。
レースで差がつくのは派手な泳ぎよりも減速の少なさなので、競技志向の人ほど、スタート後15m、ターン後15m、壁前5mの質を細かく詰める意識が重要です。
背泳ぎで失敗しないためのルールと注意点
背泳ぎは技術だけでなくルール理解も大切で、知らないまま泳いでいると、せっかくの練習成果を競技で生かせないことがあります。
また、背泳ぎは視界の向きやスタート姿勢の特殊さから、安全面での配慮も必要であり、うまくなることと安全に続けることをセットで考えたほうが長く伸びます。
ここでは、失格になりやすい場面と競技規則の要点、さらに初心者が気をつけたい安全面をまとめて確認します。
失格になりやすい場面を知る
背泳ぎで失格になりやすいのは、スタート前の足や手の位置、15mを超える水中動作、ターン時の一連動作の不備、ゴール時の姿勢など、細かく見えるが実際には頻出の項目です。
競技会に出る人は、感覚だけで覚えるのではなく、どこで何を見られているかを知っておくと、緊張しても余計な動きをしにくくなります。
| 場面 | 注意点 | 典型的な失敗 |
|---|---|---|
| スタート | 足指を縁に掛けない | つま先を掛ける |
| 浮き上がり | 15mまでに頭を出す | 水中キックが長い |
| ターン | 一連動作で回る | 間が空く |
| 壁離れ | あおむけで離れる | 腹ばい気味で蹴る |
| ゴール | あおむけで触れる | 返りすぎて触る |
規則の原文を確認したい場合は、日本水泳連盟の競泳競技規則やWorld Aquaticsのルールページを基準にすると整理しやすいです。
練習では、コーチに失格要素を見てもらう機会を作ると、自己流で気づきにくい癖を早めに修正でき、本番での取りこぼしを減らしやすくなります。
15mルールとゴール前5mを理解する
背泳ぎでは、スタート後と各ターン後は壁から15mまで完全に水没していてもよい一方で、その地点までに頭が水面上へ出ていなければならず、この距離管理は競技でとても重要です。
また、国内規則ではゴール直前に頭の一部が5mマークを過ぎれば、ゴールタッチ時に体が完全に水没してもよいとされており、壁前の処理を知っているかどうかで無駄な減速を防ぎやすくなります。
ただし、壁に届かないのに潜ってしまったり、ゴール前にもう一かき必要なのに無理に潜ったりすると、かえって失速や混乱を招くので、ルールを知っていても距離感が伴わなければ武器にはなりません。
そのため、競技志向の人はフラッグから壁までのストローク数と、浮き上がり位置を毎回確認し、自分のレーステンポで安全に再現できる範囲を明確にしておくことが大切です。
初心者が安全に取り組むポイント
背泳ぎは呼吸がしやすい反面、進行方向が見えにくく、スタートも特殊なので、初心者は安全面を軽く見ないことが上達への近道になります。
とくに混雑した一般レーンでは接触の危険があり、肩や首に余計な力が入ったまま反復すると痛みにつながりやすいため、速さより安全な反復環境を優先するべきです。
- 混雑時は背泳ぎの本数を減らす
- 壁との距離感を先に覚える
- スタート練習は深い場所で行う
- 肩に痛みが出たら中断する
- 疲労時は全力反復を避ける
スタート系の練習は、とくに指導者の管理下で段階的に進めることが大切で、恐怖心がある段階では無理に高さや勢いを求めず、水面に平行に近い入水感覚を優先したほうが安全です。
安全に続けられる環境があってこそ背泳ぎは上達するので、焦って難しい動作へ進むより、安心して繰り返せる条件を整えることを軽視しないでください。
背泳ぎを自分の得意種目に変えるために
背泳ぎを伸ばすために最も大切なのは、腕を速く回すことではなく、水面で長く楽に浮ける姿勢を作り、そのうえでキック、腕のかき、ローリング、方向感覚を同じリズムの中へ収めていくことです。
上達が止まったと感じたときは、体力不足だけを疑うのではなく、脚が沈んでいないか、頭が動いていないか、水をつかむ順番が崩れていないか、フラッグから壁までの距離感が曖昧ではないかを見直すと、改善の糸口が見つかりやすくなります。
練習は、全体を泳ぐ日だけでなく、浮き姿勢、片手背泳ぎ、回旋ドリル、ストローク数の確認、ターンやスタートの分解練習を組み合わせることで、感覚任せではない再現性の高い背泳ぎへ近づいていきます。
背泳ぎは苦手意識を持たれやすい種目ですが、基本の理解と丁寧な反復がかみ合うと変化が大きく現れる種目でもあるので、今日の練習から一つだけでもテーマを決めて積み上げ、自分なりの安定した背泳ぎを育てていきましょう。


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