キャッチアップクロールは、クロールの腕をただゆっくり回す泳ぎではなく、前で待つ感覚を使ってストロークの入れ替え、姿勢、息継ぎ、左右差を見直すための基礎ドリルです。
実際にこの言葉で調べる人の多くは、長く泳げない、腕だけが忙しくなる、息継ぎでフォームが崩れる、水をつかめている感じがしない、といった悩みを抱えており、単なる定義よりも、何のために行うのかとどう泳げばよいのかを知りたい状態にあります。
とくに水泳初心者や、自己流でクロールを覚えたあとに伸び悩んでいる人ほど、腕を早く回すことが正解だと思い込みやすく、結果として前に乗る時間が短くなって、疲れるわりに進まない泳ぎになりやすいため、キャッチアップクロールの考え方が役に立ちます。
日本語の一般向け解説ではSwimming.jpやswim mediaが、英語のドリル解説ではFORM Support Centerが、前で待つ形を利用してタイミングやプルの始まりを整える練習として紹介しており、本記事でもその共通点を踏まえて、初心者が実践に落とし込みやすい順番で整理していきます。
キャッチアップクロールはフォームを整える基礎ドリル
結論から言うと、キャッチアップクロールのいちばん大きな価値は、速く泳ぐことそのものではなく、普段のクロールで見えにくい乱れを見える形にして、整ったフォームの土台を作れる点にあります。
通常のクロールは左右の腕が連続して動くため、どこで崩れたのかを本人が感じ取りにくいのですが、前で待つ時間をつくると、入れ替えの順番や体の軸の傾きがはっきりし、修正点を把握しやすくなります。
そのため、キャッチアップクロールは初心者専用の低いレベルの練習というより、基礎を固めたい人にも、泳ぎの質を立て直したい中級者にも役立つ、フォーム矯正の入口として考えると理解しやすくなります。
前で待つ形が入れ替えを見やすくする
普通のクロールでは、片腕が前へ入る頃には反対側の腕も次の動きに入りやすいため、腕の入れ替えが雑でもそのまま泳げてしまい、自分では崩れに気づきにくいまま練習を重ねてしまいがちです。
キャッチアップクロールでは、片方の手が前に残っている間にもう片方の腕が一連のストロークを行うため、どの瞬間に待つのか、どの瞬間に引き始めるのかが明確になり、泳ぎの順番を整理しやすくなります。
この順番が見えるようになると、早すぎる手の切り替え、入水直後に慌ててかく癖、肩より外側へ手が流れる癖なども感じ取りやすくなり、直したいポイントを一つずつ切り分けて練習できます。
とくに水泳初心者は、腕を止めないほうが沈まないと思って必要以上に回転数を上げやすいのですが、実際には入れ替えが雑になるほど姿勢は乱れやすいため、いったん前で待つ形で順序を整える意味は大きいです。
前で待つという操作は見た目には単純ですが、泳ぎのどこで力を急いで使っているかをあぶり出してくれるので、クロールの基礎を見直したい人ほど有効な出発点になります。
伸びる姿勢を覚えやすい
キャッチアップクロールで多くの人が最初に感じる変化は、手を前に残した瞬間に体がすっと伸びる感覚であり、この感覚こそがクロールで楽に進むための重要な土台になります。
腕を交互に急いで回しているだけの泳ぎでは、常に何かを動かし続ける意識が強くなり、前へ伸びるよりも水をかき回す方向へ力を使いやすくなるため、ストローク数が増えるわりに前へ進みにくくなります。
一方でキャッチアップクロールは、前に残した腕と体幹で水の上に長く乗る時間をつくりやすく、ワンストロークごとにどれだけ前へ滑れるかを意識しやすいため、伸びのあるフォームを覚えやすい練習になります。
このとき大切なのは、前で止まっているつもりでも力んで肩をすくめないことで、伸びる姿勢とは腕だけを突き出す形ではなく、頭から指先までが自然に長くつながる状態だと理解しておくことです。
泳ぎながら伸びる感覚を身につけられると、普段のクロールへ戻したあとも、急いで回すより一回でしっかり進むほうが楽だと体でわかるようになり、無駄な回転数を減らしやすくなります。
左右差を見つけやすい
クロールが苦手な人の中には、右手では進むのに左手では進まない、片側だけ呼吸しやすい、片側だけ肩が沈みやすいといった左右差を抱えている人が少なくありません。
ところが通常の泳ぎでは動きが連続しているため、左右差があっても勢いでごまかされやすく、自分ではどちら側に問題があるのかを判断しにくいまま練習量だけが増えてしまいます。
キャッチアップクロールは片側ずつ前で待つ時間があるぶん、右手で引いたときの体の傾きと左手で引いたときの体の傾きを比較しやすく、進みやすい側と進みにくい側の違いを感じ取りやすくなります。
たとえば右だけ手が内側に入りやすい、左だけ肘が落ちやすい、右呼吸のときだけ頭が上がるといった癖は、普通に泳いでいると見落としやすいのですが、このドリルでは差がはっきり表面化します。
左右差に気づけるようになると、ただ二十五メートルを繰り返すだけの練習から、一回ごとに修正テーマを持つ練習へ変わるため、短い距離でも上達につながる質の高い反復がしやすくなります。
息継ぎの慌てを減らしやすい
クロールの息継ぎが苦しい人は、呼吸そのものが苦手というより、腕の入れ替えと頭の動きのタイミングが合わず、吸う瞬間だけ急いでしまうことが原因になっている場合が多いです。
キャッチアップクロールでは、前に残した腕が支えになってくれるため、息継ぎの瞬間に体がばらけにくく、いつ顔を回すのか、どの腕が前にあると呼吸しやすいのかを落ち着いて確認しやすくなります。
とくに初心者は、呼吸するときに前を見る、顎を上げる、吸うことに意識を取られてキックが止まる、といった連鎖が起こりやすいのですが、前で待つ時間があると慌てる原因を切り分けやすくなります。
呼吸の成功率が上がると、苦しいから腕を早く回すという悪循環も減り、結果としてフォーム全体が安定してくるため、キャッチアップクロールは息継ぎ改善の入口としても使いやすいドリルです。
ただし呼吸のために前で待つのではなく、前で安定できるから呼吸のタイミングも整うと考えることが大切で、息継ぎだけを目的にすると手を止めすぎる癖が残る点には注意が必要です。
速く泳ぐ土台を作りやすい
キャッチアップクロールはゆっくりしたドリルとして紹介されることが多いため、速く泳ぎたい人には遠回りに見えるかもしれませんが、実際には速く泳ぐための前提を整える意味で非常に価値があります。
Swimming.jpでも、キャッチアップに近いタイミングがストローク効率や肩の滑らかな回転につながる考え方が示されており、速く泳ぐために必要な前半の我慢と一かきの質を学ぶ視点は一般的です。
腕をただ速く回すだけでは、水をしっかりとらえる前に次の動きへ移ってしまい、前へ進む推進力よりも忙しさだけが増えやすくなるため、結果として疲れるのにタイムが伸びにくい泳ぎになってしまいます。
キャッチアップクロールで前の手を残しながら引きの始まりを丁寧に覚えると、入水直後に急いで力を入れず、良い位置でキャッチしてから押す流れを作りやすくなり、速さにつながる一かきの質が上がります。
つまりこのドリルは、それ自体でレーススピードを再現する練習ではなく、レーススピードでも崩れにくいフォームの芯を作る練習であり、基礎の甘さを残したまま回転数だけ上げるよりはるかに効果的です。
長く泳ぐ感覚につながりやすい
キャッチアップクロールが役立つ場面として、二十五メートルは泳げても五十メートルや百メートルになると急に苦しくなる人が多く、これは一回ごとのストロークで進めていないことと深く関係しています。
前で待つ感覚を使えるようになると、かくたびに少しでも前へ乗る時間をつくりやすくなり、腕を空回りさせずに距離を稼ぐ泳ぎへ近づくため、結果として長く泳ぐ土台になりやすいです。
- 一かきごとの進みを感じやすい
- 無駄な回転数を抑えやすい
- 呼吸の慌てを減らしやすい
- 体の軸を保ちやすい
- 疲れ方の原因を見つけやすい
もちろん長く泳げるかどうかはキックの強さや持久力だけで決まるわけではなく、前で待てる形があっても頭が上がれば苦しくなりますが、少なくとも忙しいだけのクロールから抜け出すきっかけにはなります。
ゆっくり長く泳ぎたい人ほど、速く回すよりも一回でどれだけ前へ進めるかに意識を向けるべきであり、その感覚を身につける導入としてキャッチアップクロールは非常に使いやすい練習法です。
やりすぎに注意する
ここまで見ると、キャッチアップクロールは万能のように思えますが、実際には向く目的と向きにくい目的があり、いつでも完全に前で手をそろえる泳ぎが正解というわけではありません。
Swimming Worldでも、三分の四キャッチアップが体の位置やローリングの練習に使われており、上達に応じて待ち方を変える発想が見られるように、目的に応じた段階づけが重要です。
| 向いている目的 | 注意したい場面 |
|---|---|
| フォーム確認 | 常に完全停止で泳ぐ癖を残すこと |
| 左右差の把握 | スプリントの実戦テンポをそのまま再現すること |
| 息継ぎの整理 | 手を前で固めて肩に力を入れること |
| 長く泳ぐ感覚づくり | キックを止めて下半身を沈めること |
初心者は完全なキャッチアップで形を覚えやすい一方で、慣れてきたら少し滑らかに入れ替える練習へ移る必要があり、ずっと止める泳ぎだけを続けると実際のクロールとのつながりが弱くなります。
大切なのは、キャッチアップクロールを最終形として固定することではなく、普通のクロールを上手にするための途中の道具として使い、得たい感覚が身についたら実泳へ戻していくことです。
キャッチアップクロールの基本的なやり方

キャッチアップクロールを効果的に行うには、ただ両手を前でそろえればよいわけではなく、前で待つ間の姿勢、引き始める位置、キックの継続、息継ぎの合わせ方まで含めて理解しておく必要があります。
やり方が曖昧なまま行うと、良いフォームを覚えるどころか、手を止めるだけの不自然な泳ぎになってしまい、かえって普通のクロールへ戻したときにリズムを崩す原因にもなります。
ここでは、初めて取り入れる人でも迷いにくいように、基本手順、意識したいポイント、セルフチェックの見方に分けて整理します。
基本手順を先に覚える
最初は壁を軽く蹴って浮き姿勢をつくり、片方の腕を前に伸ばしたまま、もう片方の腕でキャッチ、プル、フィニッシュ、リカバリーまで一連の動きを行い、前に残した手のところへ戻してきます。
手が前でそろったらすぐに反対側へ切り替え、今度は逆の腕で同じ動きを行うのが基本で、完全に立ち止まるような長い停止ではなく、前でそろう瞬間を確認しながら交互に進む感覚が大切です。
FORM Support Centerでも、頭を下げること、一定のキックを保つこと、高い肘と指先の向きを意識して肩の下あたりで引くことが要点として示されており、初心者もこの基本を目安にすると形が崩れにくくなります。
泳ぐ距離は最初から長くする必要はなく、二十五メートルを一本ごとにテーマを決めて繰り返すほうが効果的で、一本目は前で待つ感覚、二本目は頭の位置、三本目はキックの継続というように分けると練習しやすいです。
なお、いきなりノーブレスで行うと苦しくなって形が崩れやすいため、最初は片側呼吸を混ぜながら、呼吸しても前の手が消えないことを確認するほうが実践的です。
意識したいポイントを絞る
キャッチアップクロールがうまくいかない人の多くは、一度に全部を直そうとして混乱しているため、一本の中で意識する要素は二つまでに絞ったほうが体へ定着しやすくなります。
最初の段階では、前の手を残すことよりも、頭が上がらないこととキックが止まらないことを優先したほうが、全身のバランスが保ちやすく、腕だけの練習になりにくいです。
- 前の手は肩幅の前で自然に伸ばす
- 視線は真下からやや前下を見る
- キックは小さく途切れず続ける
- 入水してすぐ慌てて引かない
- 呼吸でも前の手を消さない
- 片側だけ進みにくい感覚を見逃さない
このように意識を整理しておくと、何となく二十五メートルをやり切るのではなく、一本ごとに成否が判断しやすくなるため、練習の質が上がって上達も早くなります。
逆に、前でそろえることだけに執着すると、肩に力が入りやすく、前の手が沈む、頭が上がる、キックが止まるという別の問題を呼び込みやすいため、形より全体の流れを優先する姿勢が重要です。
フォーム確認表で崩れ方を見つける
自分の泳ぎを客観的に見るのが難しい場合でも、毎回同じ視点で振り返るだけでフォームの変化はかなり把握できるため、チェック項目を持って練習することをおすすめします。
とくにキャッチアップクロールでは、成功したかどうかが感覚でわかりやすい反面、何が原因で失敗したのかまでは曖昧になりやすいので、崩れ方のパターンを表で覚えておくと修正が早くなります。
| 見えた状態 | 考えられる原因 | まず直す点 |
|---|---|---|
| 前の手が沈む | 肩に力が入る | 首と肩をゆるめる |
| 足が沈む | 頭が上がる | 視線を下げる |
| 片側だけ進まない | 左右差が大きい | 弱い側をゆっくり確認する |
| 呼吸で崩れる | 顔を前に上げる | 横へ回して素早く吸う |
| 忙しく感じる | 入水直後に急いで引く | 前で一瞬我慢する |
こうした確認表は、コーチがいない環境でも自分の泳ぎを整理する助けになり、一本ごとの失敗を感覚だけで終わらせず、次の一本で何を直すかを明確にしてくれます。
慣れてきたら動画を撮って、表の項目と見比べながら自分の癖を記録すると、同じ失敗を何度も繰り返しているのか、それとも改善してきたのかが判断しやすくなります。
効果を高める意識づけ
キャッチアップクロールはやり方だけ知っていても、何を感じ取る練習なのかが曖昧だと効果が薄くなりやすく、ただゆっくり泳いだだけで終わってしまうことがあります。
とくに大人から水泳を始めた人は、腕の動作に意識が集中しやすいため、頭の位置、体の回転、キックと呼吸のつながりまで含めて見ることで、ようやく普通のクロールへ生きる感覚になります。
ここでは、同じドリルでも上達の差が出やすい三つの意識づけを取り上げます。
頭と視線を先に整える
キャッチアップクロールで最初に優先したいのは腕ではなく頭の位置で、視線が上がるだけで腰や足が沈みやすくなり、せっかく前で待つ形を作っても伸びる感覚が消えてしまいます。
頭を下げると言っても強く首を折る必要はなく、水底を自然に見られる程度で十分であり、首の後ろを長く保ちながら水面へ体を預ける感覚を持つだけで姿勢はかなり安定します。
呼吸の不安が強い人ほど前を見たくなりますが、前を見るほど体は立ちやすく、キックも大きくなって余計に苦しくなるため、視線の修正はキャッチアップクロールの効果を左右する最重要ポイントです。
もし頭の位置が安定しないなら、最初は短い距離でノーブレスの一本を混ぜ、呼吸という要素を外した状態で頭と体の一直線を覚えてから、次に呼吸ありの一本へつなげると感覚が整理しやすくなります。
頭が静かに保てるようになると、前で待つ腕も沈みにくくなり、キャッチの始まりも丁寧に感じ取りやすくなるため、まずは視線の安定から取り組む価値があります。
ローリングの幅をそろえる
キャッチアップクロールでは、腕を前でそろえることだけに意識が向くと、体の回転が止まって平らなまま泳いでしまい、水をとらえる動作も呼吸の動作もぎこちなくなりやすいです。
一方で回転を大きくしすぎると、今度は横へ倒れ込みすぎて軸がぶれ、前へ進む力が散ってしまうため、左右で同じくらいの幅で自然に転がるようなローリングを目指すことが大切です。
| 状態 | 起こりやすい崩れ | 修正の考え方 |
|---|---|---|
| 回転が少なすぎる | 腕だけで引く | 肩から前へ出す感覚を持つ |
| 回転が大きすぎる | 横へ倒れ込みすぎる | おへそではなく体幹全体で回る |
| 左右差が大きい | 片側だけ呼吸しにくい | 苦手側の二十五メートルを丁寧に泳ぐ |
| キックが消える | 回転のたびに沈む | 小さいキックを途切れさせない |
Swimming Worldの三分の四キャッチアップが体の位置やローリングを意識するドリルとして扱われているように、慣れてきたら完全停止ではなく少し滑らかに入れ替える形へ移り、回転の連続性を学ぶのも有効です。
回転の質が上がると、前の手を残す意味が単なる停止ではなく、体を乗せ替える準備に変わっていくため、普通のクロールへ戻したときのつながりが一気によくなります。
息継ぎの合わせ方を固定する
息継ぎが安定しない人は、毎回違う場所で顔を上げてしまっていることが多く、キャッチアップクロールでも呼吸のルールを決めないまま泳ぐと、改善したい点がぼやけてしまいます。
最初は呼吸の回数を減らすよりも、どの腕が前にあるときに吸うのかを固定し、成功した形を繰り返せるようにするほうが、普通のクロールへ戻したときにも再現しやすくなります。
- 呼吸側と反対の手が前にあるときに吸う
- 顔は前ではなく横へ回す
- 吸う量より吐き切る準備を優先する
- 呼吸の瞬間もキックを止めない
- 吸ったらすぐ顔を戻す
- 戻したあとに前の手が残っているか確認する
このルールを守るだけでも、呼吸のたびにストロークが短くなる癖や、吸うために頭を持ち上げて足が沈む癖を見つけやすくなるため、キャッチアップクロールの実用性が高まります。
慣れてきたら三ストロークに一回などの両側呼吸も試せますが、最初のうちは呼吸側を固定してフォームを安定させたほうが、失敗の原因を絞り込みやすく上達も速くなります。
失敗しやすいポイント

キャッチアップクロールは基礎づくりに優れたドリルですが、やり方を少し誤るだけで、正しい感覚を学ぶどころか、手を前で止めるだけの不自然な泳ぎになってしまうことがあります。
多くの失敗は難しい技術不足ではなく、意識の置き方のズレから起こるため、代表的な崩れ方を事前に知っておくだけでも遠回りを減らしやすくなります。
ここでは、初心者から中級者まで共通して起こりやすい三つの失敗を取り上げます。
手を前で止めすぎる
キャッチアップクロールで最も多い失敗は、前で待つことを長く止まることだと誤解してしまい、手をそろえたあとに完全停止してから次の動作へ移る泳ぎになってしまうことです。
これでは前へ進む流れが切れやすく、キックも止まりやすく、実際のクロールへ戻したときにリズムがつながらないため、フォーム確認にはなっても実泳との橋渡しが弱くなります。
前で待つのは、止まるためではなく、入れ替えを急がずに整えるための一瞬の余裕を作ることだと理解すると、完全な静止ではなく、前へ乗りながら次の動作へ移る感覚がつかみやすくなります。
もし止めすぎている自覚があるなら、最初は手が触れる直前で切り替える三分の四キャッチアップに近い感覚を試し、前に残す意識と流れの連続性の両立を目指すと改善しやすいです。
上達の目安は、待っているのに止まって見えないことであり、見た目は穏やかでも水の上では前へつながっている状態を目標にすると、ドリルの意味を失いにくくなります。
頭が上がって足が沈む
腕の練習だと思ってキックや頭の位置を軽く考えてしまうと、呼吸のたびに頭が上がり、下半身が沈み、前に残した手も沈みやすくなるという崩れが起こりやすくなります。
この状態になると、本人は前で待てているつもりでも実際には抵抗が増えており、キャッチアップクロールのはずなのにかえって進まないため、ドリルそのものに苦手意識を持ちやすくなります。
| 症状 | 背景にある癖 | 直し方 |
|---|---|---|
| 足が重い | 呼吸で顎が上がる | 横へ回して素早く吸う |
| 前の手が沈む | 肩に力が入る | 首の力を抜いて肩幅で伸ばす |
| 進まない | キックが止まる | 小さく一定のキックを続ける |
| 苦しい | 吐き切れず吸おうと急ぐ | 水中で先に吐く |
この失敗を防ぐには、腕の軌道より先に、頭の静かさとキックの継続を優先し、下半身が沈まない範囲で前に残せているかを見ることが重要です。
とくに初心者は、前を見たほうが安心だと感じやすいのですが、水泳では安心感と正しい姿勢が一致しないことが多いため、感覚に頼るだけでなく動画やコーチの確認を併用すると修正しやすくなります。
目的を忘れて形だけまねる
キャッチアップクロールは形がわかりやすいぶん、手を前でそろえる見た目だけを再現して満足してしまい、何を整えるためのドリルなのかを忘れてしまうことがあります。
その結果、今日の練習で左右差を見たかったのか、呼吸のタイミングを直したかったのか、前で伸びる感覚を覚えたかったのかが曖昧なまま終わり、普通のクロールに生かせない反復になってしまいます。
- 一本ごとに目的を一つ決める
- 終わったらできたか言語化する
- うまくいかない側を逃げずに見る
- 普通のクロールで再現できるか試す
- 疲れたら距離より質を優先する
- 形より感覚の変化を記録する
ドリルは練習メニューの主役ではなく、普通のクロールを良くするための補助線だと考えると、一本ごとの意味が明確になり、惰性で続ける時間を減らしやすくなります。
練習後に通常のクロールを二十五メートル泳いで、前で待つ感覚や頭の静かさが少しでも残っているかを確認すると、ドリルの成果が実泳へ移っているかを判断しやすくなります。
練習メニューと取り入れ方
キャッチアップクロールは、単発で数本行うだけでも意味がありますが、練習の流れの中でどう入れるかによって、フォーム矯正の効果も実泳へのつながり方も大きく変わります。
とくに独学の人は、ドリルだけで終わるか、逆に普通のクロールだけで済ませるかの両極端になりやすいため、段階的な組み込み方を知っておくと継続しやすくなります。
ここでは、初心者向けの反復例、中級者向けの発展形、相性のよい併用ドリルの考え方を紹介します。
初心者は短い反復で覚える
初心者がキャッチアップクロールを取り入れるなら、最初から長い距離を泳ぐより、二十五メートル単位でテーマを変えながら繰り返すほうが、良い感覚を残したまま反復しやすくなります。
疲れてくると頭が上がる、キックが止まる、前で待てなくなるといった崩れが出やすいため、技術練習の段階では持久力の勝負にしないことが大切です。
- 25mキャッチアップを4本で前で待つ感覚を確認する
- 25mキャッチアップを4本で頭の位置を固定する
- 25mキャッチアップを4本で呼吸の形をそろえる
- 25m普通のクロールを2本で変化を確認する
- 必要なら再び25mキャッチアップを2本入れる
この流れなら、本数は少なくても一本ごとの目的が明確で、ドリルの感覚をそのまま通常泳へ移す練習まで含められるため、独学でも効果を感じやすい構成になります。
大切なのは、途中で崩れたら無理に続けず、休息を入れてでも良い形を繰り返すことであり、キャッチアップクロールは量より再現性を重視したほうが上達につながります。
中級者は段階をつけて進める
ある程度泳げる人がいつまでも完全なキャッチアップだけを続けると、実戦的なテンポとの距離が開きやすくなるため、段階をつけて普通のクロールへ近づける工夫が必要です。
そのとき役立つのが、完全なキャッチアップから三分の四キャッチアップ、そして通常泳への移行という流れで、待つ感覚を残しながら連続性を高めていく考え方です。
| 段階 | 目的 | 意識したい点 |
|---|---|---|
| 完全キャッチアップ | 順番と姿勢の確認 | 前の手を消さない |
| 三分の四キャッチアップ | 流れの連続性を作る | 止まりすぎない |
| スイムへ移行 | 実泳へ感覚を移す | 前半で急がない |
| ビルドアップ泳 | テンポを上げても崩さない | 一かきの質を保つ |
このように段階をつけると、キャッチアップクロールで得た伸びやタイミングの感覚を失わずに、より実戦的なテンポへつなげやすくなります。
中級者ほどドリルを軽く見てしまいがちですが、雑に行うと悪い癖の確認にしかならないため、短い距離でも一本の質を高く保つことが重要です。
相性のよいドリルを組み合わせる
キャッチアップクロールだけで全ての課題を解決するのは難しいため、自分の弱点に合わせて相性のよいドリルと組み合わせると、感覚がより明確になります。
たとえば左右差が大きい人なら片手クロール系、体の回転がわかりにくい人ならサイドキック系、水をつかむ感覚が弱い人ならドッグプル系を組み合わせると、キャッチアップで見えた課題を補強しやすいです。
組み合わせる順番としては、まず単純なドリルで弱点を分離し、次にキャッチアップクロールで全身の流れへ戻し、最後に普通のクロールで再現する流れが使いやすく、練習全体に一貫性が出ます。
逆に、毎回違うドリルを何となく並べるだけでは、何が改善したのかが曖昧になりやすいため、今日の主題を一つ決め、その主題に沿って補助ドリルを選ぶことが大切です。
キャッチアップクロールは単独でも有効ですが、ほかのドリルとつなぐ中継点として使うと、部分練習と実泳の橋渡しがうまくいきやすく、練習全体の完成度が上がります。
普通のクロールに生かすために押さえたいこと
キャッチアップクロールを練習したあとに大切なのは、手を前でそろえる形そのものを残すことではなく、前で急がない感覚、伸びる姿勢、左右差への気づき、呼吸で崩れない軸を普通のクロールへ持ち帰ることです。
うまくいっている目安は、通常泳へ戻したときに腕の回転だけが増えるのではなく、一かきごとの進みが少し大きくなり、呼吸しても慌てにくく、以前より少ない力で二十五メートルを泳げるようになることです。
逆に、ドリルではきれいなのに普通のクロールへ戻すとすぐ崩れるなら、キャッチアップクロールの本数が足りないのではなく、実泳へ移す段階が不足している可能性が高いため、三分の四キャッチアップや短いスイムを間にはさみながら橋渡しを増やすと改善しやすくなります。
キャッチアップクロールは、水泳初心者にとっては基礎の形を覚える助けになり、経験者にとってはフォームの乱れをリセットする道具になるので、速く回す前に整えるという発想を持ちたいときの定番ドリルとして、短い距離から丁寧に取り入れてみてください。


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